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有害事象
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ゆうがいじしょう

Adverse event

定義
(1) 患者に回避可能な害をもたらしたインシデント(WHO, 2020)
(2) 医薬品が投与された際に起こる,あらゆる好ましくない,あるいは意図しない徴侯(臨床検査値の
異常を含む),症状,または病気のことであり,当該医薬品との因果関係の有無は問わない
(3) 実施された研究との因果関係の有無を問わず, 研究対象者に生じた全ての好ましくない又は意図しな
い傷病若しくはその徴候(臨床検査値の異常を含む)
解説
(1) 2005 年に公表された有害事象報告および学習システムに関する WHO ガイドライン草案 1)では,疾
患の合併症とは対照的に,医学的管理に関連する損傷だと定義されている. 医療管理には,診断と治
療,診断または治療の失敗,および医療を提供するためのシステムと機器といった医療に関する全ての
ことが含まれ,有害事象には回避可能なものと回避不可能なものがあると説明された.2009 年に発表さ
れた患者安全の国際分類の概念的枠組み(Conceptual framework for the International Classification for Patient Safety)でも,adverse event と harmful incident は同義とされた(WHO, 2009).しかし,
2011 年に発行された患者安全カリキュラムガイド多職種版の重要な概念語の定義集では,有害反応
(adverse reaction)という用語が新たに定義され,正しいプロセスに従って適切な行動によって実施され
たにもかかわらず患者に発生した予期せぬ害として,adverse event と区別されるようになったが
(WHO, 2011),一方で,患者安全カリキュラムガイド多職種版の本文では,harmful incident と
adverse event が置き換え可能な形で記載されている箇所もあった 2).2020 年に発行された WHO の文
書では,両者を区別した分類が明記された(WHO, 2020).このように WHO の患者安全の概念にも変化
がみられるが,本用語集は,WHO の最新の定義を採用することとした.回避可能な害は,プロセスに
エラーや標準的な医療からの逸脱といった問題があったものを指すが,害に至る機序は複雑であり患者
側の要因の関与もある.また,別の方法をとっていれば,害を軽減できたのではないかと考えられるも
のもあり,これを ameliorable adverse event という用語で定義する考えもある 3) .明らかなエラーが
あったインシデントだけを医療安全/患者安全の活動の対象にするのではなく,より質の高い医療を提供
することによって,患者のアウトカムを改善するという考えもある.より緊急性のある活動は,システ
ムの改善によってエラーや標準からの逸脱による害を無くすものだと言えるが,医療の質改善と患者安
全は相互に関連し,区別せずに実装させていくという考えもあり,adverse event をより広く定義する
ことは十分合理的な考え方である.
(2)(3) 治験中に得られる安全性情報については,日・米・EU 三極医薬品承認審査ハーモナイゼーショ
ン国際会議(ICH)の合意事項に基づいて,有害事象や有害反応の定義が定められている 4,5).人を対象
とする臨床研究においても,国外と日本で同様の有害事象の基準が定義されている 6,7)
参考文献
1) World Health Organization. WHO Draft Guidelines for Adverse Event Reporting and Learning
Systems From information to action. (2005)
2) World Health Organization.患者安全カリキュラムガイド 多職種版. (2011)
https://www.who.int/docs/default-source/patient-safety/9789241501958-
jpn.pdf?isAllowed=y&sequence=3
[アクセス日 2023.05.07]
3) Adverse Events, Near Misses, and Errors (2019). https://psnet.ahrq.gov/primer/adverseevents-near-misses-and-errors[アクセス日 2023.05.07]
4) Guideline for good clinical practice E6(R2). (2016)
https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/ich-guideline-good-clinicalpractice-e6r2-step-5_en.pdf[アクセス日 2023.05.07]
5) 治験中に得られる安全性情報の取り扱いについて.平成 7 年 3 月 20 日 薬審第 227 号(各都道府県
衛生主管部(局)長あて 厚生省薬務局審査課長通知).(1995)
https://www.pmda.go.jp/files/000156127.pdf[アクセス日 2023.05.07]
6) National Library of Medicine. Glossary of Common Site Terms.
https://clinicaltrials.gov/ct2/about-studies/glossary[アクセス日 2023.05.07]
7) 人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンス.(2022)
https://www.mhlw.go.jp/content/000909926.pdf [アクセス日 2023.05.07]

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