The 9th Annual Congress of the Japan Society of Clinical Safety
第
9
回
日本医療安全学会学術総会
慶應大学看護医療学部准教授
福田紀子
先生
患者に安全で質の高い医療サービスを提供するために,医療施設や関係団体による医療安全体制の整備に向けた絶え間ない努力が続いている.しかし,医療の不確実と高度化・複雑化する医療現場において,医療事故により患者に有害事象が生じる可能性はゼロではない.医療事故情報収集等事業の年報を見ると,報告された医療事故の当事者の中で,その数が最も多いのが看護職であり,医師がそれに続いている.
医療事故の当事者である患者そして家族の精神的な衝撃は大きく,原状回復及び事故後の継続的な支援の重要性は言うまでもない.そして当事者となった医療者に与える影響も非常に大きいものであり,心的外傷性の出来事として,その影響は長期にわたって続く.精神的に燃え尽き,退職や離職といった事態につながることもある.今日,医療安全において組織事故,システムエラーという概念が広く認識されるようになり,事故当事者となった医療者への支援の必要性が理解されるようになった.医療事故の再発防止のために,その教訓を生かした教育的支援や,医療者が安心して,安全に業務を遂行できる医療システムの構築に向けた努力は行われているものの,精神的なダメージを受けた当事者をどのように支援していけば良いのかについては,それぞれの医療施設が試行錯誤しているのが現状である.医療事故発生後の組織対応や周囲の人たちとの関わりの中で,二次的な傷つき体験する当事者もいる.
私は精神看護学を専門分野とし,その立場から事故当事者となった医療者,特に看護職への支援に携わってきた.本講演では,そうした私自身の経験や,当事者の支援者として奮闘する看護管理者へのインタビュー調査の結果をもとに,医療事故に関与した当事者への支援について共有したい.
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