総会長挨拶 読み込まれました

総会長挨拶

第10回日本医療安全学会学術総会 代表総会長 渋谷 健司

第10回日本医療安全学会学術総会

代表総会長

渋谷 健司

(東京財団政策研究所研究主幹)

日本医療安全学会学術総会の大会長を務める渋谷健司と申します。今回の学会のテーマは、「Reimagine 〜『人間の安全保障』から考える医療安全の将来〜」です。

日本は、少子高齢化や財政などの問題に直面しており、保健医療システムの持続可能性が危ぶまれています。また、世界的には、新型コロナウイルスによるパンデミックや地政学的危機により、社会の分断や格差が浮き彫りになりました。医療安全も例外ではありません。医療ニーズの多様化や過剰な労働時間など、医療安全システムの持続的な強化と進化には、どのようなアプローチが求められるのでしょうか。

安全な医療環境は、患者と医療提供者が健康を追求できる状況を作り出し、安心感を提供します。しかし、将来への不安感も拡大しています。健康指標や経済状況が改善しているにもかかわらず、世界の多くの人々の不安感は高まっています。今後は、個人がリスク管理を行い、不安定な時代に適応し、社会の分断に立ち向かう必要があります。このような状況下で、「人間の安全保障」というアプローチが重要です。個人の保護と力強さを促進するだけでなく、人々の連帯が求められ、信頼の構築が最も重要な要素となります。

政治や社会、経済のシステムが大きく変わる時期に、日本医療安全学会は10回目の開催を迎え、医療安全を「人間の安全保障」という視点で再定義し、未来に向けた取り組みについて考える場を提供することができればと考えております。アカデミア、民間、省庁、政治、メディアなど多岐にわたる分野からの参加者と素晴らしい講演者による積極的で本質的な議論が期待されます。医療安全にかかわる全ての関係者が一堂に会し、医療安全システムを「Reimagine(再構築・再創造)」することで、新たな展開が生まれる契機となることを期待しています。多くの皆様に、ぜひ積極的にご参加いただきたくお願い申し上げます。

第10回日本医療安全学会学術総会 共同総会長 小林正人

第10回日本医療安全学会学術総会

共同総会長

小林 正人

(埼玉医科大学脳神経外科教授)

この度、第10回日本医療安全学会学術総会を渋谷健司先生、藤井千枝子先生ともに開催させていただきます。

患者さんが安心して安全な医療を享受できることが医療安全の第一の目標となります。しかし渋谷先生もご指摘の通り、現在の日本社会は保険システムの脆弱性、社会の分断・格差など様々な問題を含み、皆が安心できる安定した社会とは言い難いです。疾患を抱えた患者さんの不安は尚更でしょう。そして我々医療従事者もその一員です。

三年以上にわたるCOVID禍の中、医療体制のほころびも明らかとなりました。科学の進歩に伴って、幹細胞による移植治療、新たな抗がん剤、医療ロボットなど華々しい成果が喧伝される一方、一つの新たな感染症で瞬く間に多くの命が奪われました。医療従事者には、元々過大であった通常の業務に加え、多大な負担がかかりました。
日々の診療においても、最新の医療技術で万全を期し、患者さんの回復を信じて行った治療や検査であっても合併症や副作用が生じえます。患者さんはもちろん、医療従事者には大きな負荷となります。こうした負荷は、本人が努力しまた周りも育て上げてきたプロフェッショナルの能力を著しく減損、損失することとなります。患者さんへの安全な医療の提供は勿論、医療者も守られねばなりません。

医療安全が揺らぎ社会のシステムや医療体制の変革を迫られたこの三年間ですが、様々な試練を通じて皆が知恵を出し、改良して医療現場も変わりつつあります。日本の社会システム、医療システム、患者さんの問題や協力、医療者の安全。本会では様々な分野の多くの方々の話を聞いて話し合い、将来の医療安全の一助となりますよう準備を進めてまいります。
皆様のご参加を心よりお待ちいたしております。

第10回日本医療安全学会学術総会 共同総会長 藤井 千枝子

第10回日本医療安全学会学術総会

共同総会長

藤井 千枝子

(慶應義塾大学看護医療学部教授)

第10回日本医療安全学会学術集会総会に渋谷健司先生、小林正人先生の下、共同総会長を拝命し、開催させていただきます。

今回の学術集会では、渋谷先生の発案から始まり、人間の安全保障をテーマにしております。未来を鳥瞰する講演者たちの話を伺えることに、わたくしも期待にあふれています。医療安全文化の醸成とも関わりの深いSDGsの目標16の「公正、平和かつ包摂的な社会を推進する」についても、先導的な学術集会になると信じています。

近年は、いくつもの社会的課題を見いだせても、これという解決策を見つけるのが難しいのが現実かもしれません。本学術集会は、医療安全を推進する講演者、医療安全学会の部会からの提案もあり、場は異なっても解決のヒントなど、善き未来に向けて勇気づけられると思っています。

医療安全は、多くの人たちが手をつなぎ、協働して成り立つ活動です。そのためには個人のモラールも大切です。医療安全に携わる皆々様は、一人ひとりの正義(justice; 医療安全学会学術誌16号をご参考ください)や、心理的安全性のある仲間関係などを支援することに日々尽力されていると思います。医療安全に真摯に向き合う方々が集ってこそ、医療安全システムが再創造できると考えております。来年も仲間に会いにいきたくなる学術集会となるよう、医療安全管理者交流会も計画しております。

関係者一丸となって準備しておりますので、暖かな日差しの頃の学術集会にお越しください。